あなたの事が こんなに大好きって

私も 歌にできたら いいのに







Cantas
















僕たちがおじいちゃんになっても、五人で歌い続けていきたいですね」

日本のボーカルグループのパイオニアと呼ばれるゴスペラーズが10周年を迎えた年から5年の月日が流れた。







決して平坦ではなかったこの道を歩んできてもなお、彼らは、そして安岡優は歌い続けたいと願うのだと

ブラウン管のなかの恋人を眺めて思ったものだった。











年の瀬、教師も走る師走。ゴスペラーズには珍しく、一日オフが取れたと優は言う。











「今日は久しぶりのオフだからとゆっくり過ごしたいね」



優がオフの日は絶対に家に仕事を持って帰ってこない。持って帰って来ているのかもしれないけれど、

私が家に居る時には仕事を持ち出してやり始めるなんてことは、まずない。



「私の事より、仕事は大丈夫なの?締め切りとか締め切りとか?」



からかって言ってみるけど、私のせいで他のメンバーに迷惑がかかったらちょっと嫌だなと思う。

ちょっとって言うのは、私が優と出来るだけ一緒にいたいって気持ちが邪魔をしているからだと思うけれど。



「ん?大丈夫〜。こう見えてもデキる男だからね、僕は」



ひらりと嘘とも本当ともつけない言葉でかわしてしまう。



それが、ずっと変わらない優の優しさ。



「これからまた忙しくなっちゃうからね。に充電してもらわないと途中で倒れちゃうかもしれないから」



そう言ってソファに座る私をぎゅっと抱きしめてくれた。



温かい、大きな腕。栗色のさらさらの髪。

2人の周りに流れる空気。細く流れる音楽。

ちょっとだけいつもよりゆっくりの、かけがえのない時間。



大好きだけじゃ言い表せないこの気持ちを、私も歌にできたらいいのに。











「私も、歌が歌えたらよかったなぁ」

頭を肩に乗せてぼんやり呟いてみた。



は歌上手だよ〜?どうしたの、急に」



「違うの、カラオケとかそういうのじゃなくて」



「そういうのじゃなくて?」



「いや、だからさぁ?優がこんなに大好きって歌にできたらよかったなぁって」



いざ口に出すと恥ずかしいものです。思わず顔がそっぽを向いてしまった。







「僕は歌うたいでよかったなって思うね〜やっぱり」



私の心を見透かすように、長い指で髪を透いてくれながら優もぼんやり呟いた。





「でも、私はすっごく大変な仕事とか、やっぱり向かないのかもしれないなぁ

おこがましいけど、なんか音楽界って大変そうって漠然としたイメージとかしかないかなぁ」





優が急に私の顔を覗き込みながら言った。





「確かに楽しい事ばかりじゃなかったよ。でもがいてくれるから、僕は歌を歌えるんだよ?

がいなかったらいい曲も詩も書けないんだよ?

っていう素敵な人が僕をこんなにも支えてくれて、ゴスペラーズをここまで連れてきてくれたんだって、

僕らの音楽を聴いてくれる人に伝えたいんだ」



なんか恥ずかしいね



優がぼそっと付け加えた。

でも私はちょっと納得がいかない。





「だから私も歌が歌えたらよかったのにって言ってるのに」





にやり、優が笑ってウインクした。





「わかってないなぁ、は。が僕をこんなに好きだよっていうのを、僕は歌にしているんだよ?

それと一緒に僕がこんなにを愛してるんだよってみんなに伝えるんだって言ってるじゃない?」



「じゃあもっと優が大好きだってたくさん言わなきゃね」


私も思いっきり甘い言葉で優を負かせるとおもったのに。




「言わなくてもわかるよってちょっと自意識過剰かな?でも僕のほうがを愛してるかもね、負けないよ〜」















微笑んで願いこめて愛する人に口付けたら

私だって世界で一番の唄うたい

誰にも真似できない

それはあなたが教えてくれた

この世で一番美しいメロディ





いつまでも この歌があなたに届くように







「ねぇ、優?」




振り向いたらキスをひとつ





この短い歌を受け取ってくれる?





愛してる ずっと側で 歌って くれますか?








あとがき。

「5555Hit!ありがとう企画」でリクエストいただきましたトモさんから
「五年後の2人」ってことで…

初!小説でございます。
む〜ず〜か〜し〜(叫)小説書くのって難しいですね…
こんなのしか書けませんでしたが
どうぞお納めくださいませ。
リクエストありがとうございましたっ!



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