蜘蛛の糸



君に出逢えたという その事実を
消し去る事は面白い程に容易く

脳裏に焼きつく その笑顔を
首を傾げるだけで まるで抜け落ちるというような





そんな戯言を言えるはずも無く




ただ ただ 毎日が
無意識に君の影を探すことから始まり
迷子のように途方に暮れて 夜が更ける
行き場さえも 失くした 闇の中で











ある日 銀色に光る細い糸を見つけた
ぼんやり輝くそれは
可笑しいくらい当たり前に 僕の前に垂れ下がっていて
手繰り昇れば 君にたどり着くと思った






必死にしがみついて昇る僕を
君は 蓮の池の隙間から覗いている








ふと下を見ると
すぐ下にたくさんの何かが蠢いていた
目を凝らすと 全て僕だとわかった




振り払えば 二度と昇れない
振り払えなければ 重さに耐えられなくなって


そのうち 糸を掴む気力も無くなってきて
声の限り 叫ぶ事すら出来ない

君の名前すら呼べない
雲間から光も見えない


必死にしがみついて昇る僕を
君は蓮の池の隙間から覗いている

悲しい顔をして こちらを見ないで







一筋 光が差し込んだと思った瞬間
躰が浮いて 感覚を喪くした



ふわり 無重力の中で 確かに見たもの



触れれば割れる ガラス細工



君の涙が きらり 光って
僕の横を 通り過ぎた





ああ 綺麗




僕の愛した人は 零す涙さえ美しいよと





目を瞑って 闇に全てを任せて
でも 最期の望み 虚空に腕を伸ばして



握りしめた 右手が 空を 切った





夢現 行きつく場所のないココロとカラダを
どうしようもなく 蜘蛛の糸に 縛られて
僕は 明日をどうやって生きよう?









あとがき。

芥川龍之介の「蜘蛛の糸」は小さい頃から大好きなお話の一つです。
主人公が、どうも、酒井さんとかぶるよ?
私だけかな…

感想、BBSに寄せていただけると嬉しいです。



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