春の香りが 君を更に色づけるように



あの日の面影






「…ただいま〜…っと」

ツアーの間のつかの間の休息。
移動の途中で、東京に戻ってきた。
一番に向かったのは、言うまでも無い、君の部屋。

暗がりの部屋に、ぽつん。
ベッドサイドの灯りをつけたまま君がベッドに顔をうずめて眠っていた。




今日は東京に戻ってくるから、葉衣に会いに行くよ。
でも、遅くなるかもしれないから、もう眠ってて?

明日は一日休みだから、葉衣とゆっくりできるから。

今日の朝、スタジオ作業の合間に送ったメール。

ありがとう、待ってるから。
でも無理しなくて良いからね?気を付けて。

言葉少ない君からの返信。でも葉衣からのメールは大事な気持ちがいつもその言葉に包まっている。


いつも葉衣は優しい。絶対に、会えないから寂しいとか言わない。
俺は、葉衣と会えなくて寂しいよ。でも葉衣だってきっと寂しいに決まってる。
でも、きちんと自立した、それでいてどこか儚げな葉衣が大好きなんだ。
だから俺だって頑張れる。時に酷く儚い君を守りたいから。
ツアーで立つ舞台から俺の声が、何処に居たって葉衣に届くように。
ありったけの愛を歌にこめて、全てを唄うんだ。


移動の途中だから、たくさんゆっくりは出来ないかもしれないけど、
それでも俺は葉衣の側に居たかった。
でも、やっぱり夜中になっちゃったなぁ。。


しゃら…

手に持っていた花束のセロハンが音を立てた。
お花見にも今年は行けそうに無いから、とっておきの春の花で花束を作ってもらった。
鼻をくすぐる、新しい命が芽吹く香り。

気に入ってくれると思うんだよね。
君は、花の香りが大好きだから。
いつも花を見ると幸せそうな顔をする。
その笑顔に、俺は惚れたんだよね。
今でも、ずっと変わらない。笑顔だって、何だって愛しくてしょうがないんだけど
もっと、素敵な笑顔が見たい。そう思って、自分でも花を選んだから。



葉衣を抱えて、ベッドに運ぶ。

「ん…かおる?」
目を覚ました俺の可愛いお姫様。

「やっぱり遅くなっちゃった、ごめんね」
髪を撫でて、ベッドに腰掛けた。
「帰ってきてくれたんだ…ありがとう、すっごく嬉しい」

「明日はずっと一緒に居られるよ。待っててくれてありがとう」
おでこにそっとキス。
くすぐったいように君が笑って、俺の胸に顔をうずめた。

「…あ、薔薇の香りがする」
「花、買ってきたんだ。今年もお花見行けそうにないから…ごめんね、いつも側にいられなくて」

良い香りね

そう言って君が微笑んだ。

あぁ、変わってない。あの日の面影と同じ。
いつも、いつでもその笑顔で俺を支えてくれた。
素敵な笑顔。誰でも、幸せにしてしまうような、多分生きてきた中で一番安心するような、微笑み。

思わず、ぎゅっと抱きしめたらくすくす笑いがこぼれた。
多分、二人同時に。どちらからともなく、愛しさが笑顔になる。



「来年は、きっと桜を見に連れて行ってね?」
笑顔のまま、君がそう言ったから。
「来年も、その先も、ずっとずっと一緒に居てよ。」
照れ笑いながら、そう答えた。

いつも、四六時中側にはいられないけど
でも、いつも俺は誰よりも君を想ってるから。
その笑顔で、ずっと俺の隣で笑っていてよ。

「お姫様、おやすみ。明日はずっと隣に居るからね」
「ん、薫、大好きだよ」
夢に堕ちる途中の君の言葉。
取りこぼさないように、そっと口付けた。

今夜は、春の香りに包まれて、隣に君が居るから最高の寝心地だな。
そう思いながら、葉衣を抱きしめてそっと横たわった。





あとがき。

melodies」葉衣さんへ相互リンクのお礼です。
葉衣さんからのリクエストは
「あの日の面影」と言うことで…
夜這いの黒沢さんになってしまいました(笑)
遅くなってしまい、本当に申し訳ありませんでした!
こんなお話でよければ貰ってやって下さい。
そして、こんな私ですが、これからもよろしくお願い致します。


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