プレゼント










もうすぐクリスマス。

雄二はクリスマスにライブがあるから一緒に過ごす事は出来ないらしい。

毎年の事だからそれは仕方ないと思うけど・・・クリスマスが近いこの日に一緒に居られるんだから

少しくらいかまってくれたっていいじゃない・・・


「ねえ雄二?」

「んー?」

「ねえってば」

「なに〜?」

いくら呼びかけてもこっちを振り向いてくれない。

さっきから手元の本に没頭して顔を上げようともしないし返事もおざなりだ。

「雄二!」

「だからなにー?」

「・・・ちょっとは気にかけてよ・・・」

わざと小さい声で言ってみる。

「え?何って?」

やっとこっちを向いた雄二は案の定聞こえてなかったみたいで。

というか聞く気はあるの?

「雄二はなんのためにここに居るの?!私は雄二にとって何?!呼んでも振り向いてもくれないし・・・少しは私の事も気にかけてよ、ばか!!」

息継ぎもなしに一気に出てきたその言葉は、口に出す前に思っていたよりももっと私の胸を突き刺した。

「・・・らむ?」

驚いたみたいに目を大きく開けてきょとんとする雄二の顔を見た瞬間に何かが切れて、涙が溢れ出した。

なによ、そんな困った顔して・・・それじゃあ私がわがまま言ってるみたいじゃない。

「どうしたんだよ?急に・・・」

寝転んでいた雄二は立ち上がって、急に泣き出した私の肩を優しく掴む。

だめだ・・・今こんな事をされたら感情に任せてきっともっとひどいことを言ってしまう。

「ごめん、雄二。私帰るね。」

「おい!?ちょっ、なんで―――?!」

雄二が引きとめようとするのも聞かずに部屋を出る。



コートも着てマフラーをしていても寒く感じる北風が強く吹き抜けていく。

「あーあ、最悪なクリスマスになっちゃうなー・・・」

明るく繕おうとしている自分に気付いてこんな冷たい風にひとりで吹かれている自分がひどく惨めに感じた。

「う・・・うぅ〜」

道端にしゃがみこんでまるで迷子になった子供のように、でも声を上げて泣く事なんて出来るはずもなく
必死で声を押し殺して泣く。

自分で出てきたくせに寂しいなんて、私はどんなに勝手なんだろう。

なんであんな些細な事で泣いてしまったんだろう。

なんてあんな酷いことを言ってしまったんだろう。

後悔やら自分の馬鹿さ加減への怒りやらがごっちゃになってまた涙が止まらなくなる。

ずずっと鼻をすすってしばらくしゃがみこんだまま、うだうだとどうしようかなんて考える。

『こつこつこつこつ・・・』

後の方で聞こえた走ってくる足音に、こんなところ誰かに見られたら最高にかっこわるい!と勢いよく立ち上がって振り返る。


「あっ―――」


振り返った先には複雑な顔をした雄二が立っていた。

息が上がっているようで肩が呼吸に合わせて上下していた。

「っ・・・らむ、」

呼吸が整わないまま途切れ途切れにゆっくりと話し始める。

「ごめん。俺は、お前が隣に居るだけで幸せだったから、お前も・・・らむもそうだと思い込んでて・・・ごめん。」

勝手に怒って泣いて困らせた、全部、全部私なのに、雄二は二回も謝って、まだ涙の乾かない私の頬を優しくなでてから

その手を私の頭に回して包み込むように優しく抱きしめてくれた。

「雄二―――」

私は顔を上げて、私が悪いの、と言おうとしたけれど、雄二の穏やかな目に制されたような気がして言えなかった。

「おれはこんなやつだから、お前が望むような事はなにもしてやれてなかったかもしれない。

 それに、これからも思うようにしてやれないかもしれない。でも・・・」

言葉が途切れて、さっきまでゆっくりと穏やかな音を紡いでいた唇が私の唇にそっと重なった。

「愛してる。」

唇が離れた瞬間に二人の間に冷たい北風が吹いて、さっきまで暖かかった唇がとても冷たく感じたけれど、

「俺にはこの言葉しか思いつかないんだよ。」

そう言って苦笑いした雄二の顔を見たら、胸の奥の方がじんわりと温かくなった気がした。

「やっぱり雄二は分かってないよ。」

「え?」

『愛してる』なんて口が裂けても言えないような人の口からためらいも無く『愛してる』なんて言われたら・・・

また溢れそうになる涙を必死に堪えてすこし強がって言う。

「私は、その言葉が他のどんな言葉より一番嬉しいんだよ?」

そんなあなたに『愛してる』と言われたら、私はどんなことがあってももうあなたから離れたいなんて思わない。

こんなにも勝手でわがままな私を許してね。

そして、そんな私に、こんなに素敵なクリスマスプレゼントをありがとう。

私をぎゅっと抱きしめているその腕を感じると、堪えていた涙がやっぱり堪えきれずに頬を伝う。


「雄二、ごめんね。私すごく幸せだからね?・・・ありがとう。」


















END








UPが遅くなりすいません!!
相互リンクのお礼にと、「melodies」の葉衣さんからこんな素敵なお話を頂きました!
こんなに素敵なものを頂いておきながら、こんなに遅くにUPしてしまって…
雄二さんにこんな事言われるなら浮気しちゃうかも…(ヤス→雄二)
本当にありがとうございました!
そしてこれからもよろしくお願い致します♪

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